イギリスへ 〜上海トランジット〜
3/2土
10時間のトランジット
上海には来たことがなかった。
学生時代に中国の内陸を2ヶ月旅したことがある。
それは初めての長旅でディープな旅だった。
ユースホステルなどの安宿に泊まり、バスや列車で東南アジアを目指した。
ほぼ中国人にしか会わず、彼らと筆談で言葉を交わした。
日本では反日などのイメージがあるが、人口13億のこの国の懐は深い。
誰一人から日本人だといって罵倒されることも無かった。
もっとも中国語をあまり知らないから、気づかなかったこともあるだろう。
後で僕の筆談ノートを見た中国人の友人は、
「この人、あんまり良くない人ね」など所々指差して苦笑していた。
寒い朝の饅頭と豆乳。何時間もの硬座。
中国を好きになった。だがそれ以来訪れることはなかった。
上海でのトランジットが決まったとき、入国してみたいと思った。
同じ値段で複数のトランジット時間が選べたので、
そこで長めの10時間にした。
1時間45分という短フライトでも機内食が出た。
死んだ味の食べ物たちだが、それでも機内食にはいつもテンションがあがってしまう。
そうこうするうちに上海に到着して、無事入国。
空港バスで市内に出ることにした。ネット情報では空港から上海駅まで8元だったが、実際は24元くらいした。
中国語は中国を旅している間に学んだり、その後に大学で入門講座を聴講したりして少しだけなら分かるのだが、それが役に立った。
車掌のおばさんに訊かれた時に行先を「火車站」と言えたからだ。列車駅の意味である。
バスからの上海の眺めは良かった。最初は高速道路なのだが、そこから見える街並みはよく緑化されていた。
中国は一旦何かをやるとなったら、金をかけて大規模にできるのがすごいところだが、この緑化事業も大規模なものであったようだ。
ただもしかすると高速からみえる沿道のみかもしれない。そうであったらそれはそれで中国らしいといえる。
上海駅の近くでトマト味の新疆面と水餃子を食べて、帰りは地下鉄で空港に戻った。
久々の中国の雰囲気に浸れて満足した。
彼女のチャングも束の間のバス旅が楽しかったようだ。
もっとも彼女はこの旅の出発の数日前に食べた牡蠣にあたっていたため、スパイシーなものや癖のあるものがほとんど食べられないというハンディを負っていたのだが。
さてここからロンドンへ、12時間ほどのフライト。