農的ジプシー

農的ジプシー生活のあれこれ

サンフィールド1日目

3月4日 月曜

 

朝ごはんにオートミールを食べた。

 

オートミールはオーツ麦をミルクで煮たお粥。

オーツ麦は前の晩から水につけておくことで柔らかくなり粘り気も出る。

シンプルながら、僕はこれがなかなか気に入ってしまった。

ビルははちみつをかけていたが、ジェラディーンは「甘すぎる」とかけない。

 

その後エドが来るまでの間にビルに買い物に連れて行ってもらった。

 

そういえば、ビルは時々ウィリアムと呼ばれていて混乱したが、

調べてみるとWilliamのニックネームがBillなのであった。英語のニックネームはよくわからないね。

 

10:20にエドが来た。ガッチリとした男。

車の後部座席には、犬が2匹乗っていた。モスとホリー。

ホリーはヒイラギのことらしい。モスのお母さんで足腰が弱っている。

2匹とも飼い主に忠実な、利口な犬だった。まるでエドの言葉がわかるよう。

 

ところで、ヨーロッパで見る犬、特に田舎の犬は利口であまり吠えず、良い犬ばかりだ。

飼い主の教育が良いのかもしれないが、

まず第一はストレスが少ないことが理由なのかなと思う。

たいていの場合、日本のように鎖で繋がれていないし、公園や野原で自由にかけまわれる。ロンドンの地下鉄にだって乗れるのだ。

人々の犬への態度も、こわがるでも、ペットとして溺愛するでもなく自然なものであり、見ていて気持ちが良い。

 

とにかく、こんな犬ならいつか欲しいなと思う犬にたくさん会った。

 

さてエドにはまずGlasshouse Collegeという教育施設に連れて行ってもらい、ざっと見学した。ここは知的障害や学習障害のある青少年たちが主にガラス工芸を学ぶ場でラスキンミルの1校である。真ん中に池があり、周りにいくつか工房がある。羊毛の工房などもあった。

 

その後、Vale head ファームを見学する。ここもラスキンミルのバイオダイナミック農場で、ゆるやかな丘の連なりの中に位置していた。砂っぽい土地のため耕作にはあまり適していないらしいが、気持ちの良い土地であった。生徒は数人しか見かけなかった。

 

ここに来る途中、トールキン指輪物語の舞台の着想を得たという岩屋をちらっと見た。僕は子供の頃に原作を読み、その世界観に浸りあこがれた。

映画はニュージーランドで撮られたというが、作者のイマジネーションの根っこはもちろんイギリスの風景であり、伝説なのだろう。

 

その後お目当のサンフィールドに到着した。

エドの農場アシスタントのデーブに会う。

40代の子供がいる女性で英語がわかりにくかった。

口をあまり開かずにしゃべるのだ。

フランスで行っていた学校の校長がイギリス人女性だったのだが、

彼女の英語によく似ていた。

 

日本では、英語の発音に関して、

アメリカはどうの、イギリスはどうのとうるさいが、

イギリスのなかだけでも多様な 話し方があるのだから、そんなに発音を厳密に学習する必要はないと思う。

 

それよりも相手にゆっくり話してくれと頼む勇気、

そして自分の言いたいことをシンプルな文法で明快に伝える能力が重要であると思う。

 

僕自身、相手の言うことを全部聞き取れなくても、

わかったつもりになることがよくあるので気をつけないといけない。

聞き取れなかったら恥ずかしがらずに訊き返そう。

 

昼ごはんは、学校の食堂で食べさせてもらえた。

2択のメインを選び、サラダは自分が食べたい分だけ

色んな種類を選んで乗せてもらえるシステム。

 

僕はパスタ、チャングはスープとパンを頂いた。

 

午後はアシスタントのデーブと行動を共にする。

イギリスのこういう教育施設は規則が厳しいらしく、

ポリスチェックを受けてない部外者やビジターは四六時中、

誰かスタッフと行動を共にしなければならない。

 

 

ここサンフィールドの農場には、たくさんの動物がいる。

ヤギ、羊、ニワトリ、豚 がいた。

 

このなかでも、豚は独特でおもしろい。

ニュージーランドの「クニクニ」という種。

押しつぶされたような顔に上向きの鼻、あごがしゃくれ人間のような前歯が見える。

 

「クニクニ」はマオリ語で「太って丸い」という意味だとエドが教えてくれた。

我々ふたりは「クニクニ」という語感にはまって、それ以後よく使ってしまう。

豚がクニクニなんてぴったしではないか!

 

この豚は草だけで生きていけるらしい。

エドは、言っていた。

「イギリスのここミッドランドのような地方は草原が多くある。穀物を餌とするチキンや魚を食べるなんて本当は不合理で、こんな草食動物を食べるべきなんだよ」

 

 

この午後はあまり働けなかった。

羊のテッドが逃げだしたからだ。

テッドは4匹兄弟の末っ子で、体が小さく弱々しい。

ほかの5匹の羊にいじめられるので隔離され、デーブのペットのようだった。

その彼が逃げたのだ。デーブは取り乱していた。

 

捜索のすえ、学校の脇の道路を歩いているところを運良く発見して捕獲。

その後もエドの犬がいなくなったりして、混乱した状況の初日だった。

 

夕食は、スーパーで買った野菜を炒め、ご飯を炊いた。

明日は8時にエドが迎えに来る。