パンチャ・ヌーダ
マチェは一人息子。
本名はマルチェッロといって、
今われわれがお世話になっている、アレとフェデリコの息子だ。
もうすぐ3歳になる。
ずんぐりした体型で目がクリクリしていて可愛いのだが、
病的に偏食で、トマトとチーズでできている。
食べた後にすぐ吐くことも多いので本当に病気かもしれない。
両親とイタリアンマンマのおばあちゃんティーナに囲まれた暮らしなので、
甘やかされ、わがままですごく気分屋でもある。
いつもかん高い声でなにか叫んでいる。するとみんなが構ってくれるのである。
もちろん機嫌がいい時も叫ぶ。
石づくりのこの家にはいつも彼の叫びがこだましている。
でも彼にとって不幸なことに、常に3人と水いらずで居られるわけではない。
この家庭はWWOOFの受け入れホストであり、
常に世界中から滞在者が来るのである。
今回は遠い日本から見知らぬ二人がやって来た。
イタリア語すらしゃべられないアジア人である。
最初はわれわれとまったく関わろうとしなかった。
というか存在を無視されていた。こんなに可愛くない子供もいるんだという感じ。
食事の時は僕の向かい側に座るのだけれど、ほぼ目も合わない。
昨日で滞在1週間が過ぎたのだけど、ここでようやくチャングが彼に興味を持たれた。
最初はスリッパをとられ、「捕まえてみろ、このモンスター」と言われたのだった。
その後、追いかけっこの末、咳き込みはじめて、吐いた。
彼と関わるのは難しい。
そして今夜もなかなかご機嫌。
満腹の腹を「パンチャ・ヌーダ(裸の腹)」と自慢げに見せてくれた。
そしてその裸の腹を出しながらこけてた。
なんかダメな、でも憎めない奴なのだ。